1995年に,マーゲンハイムとオピッツは論文で,社会科の学習においてコンピュー タによるグループ学習の教育学的基礎について論じている。彼らによれば, もともとプロジェクトメッソッドのために開発された幾つかの概念が,コ ンピュータによる共同学習で利用できるとしている。(以下は,それを, 筆者が要約したものである)
上記の基準を適応するとして,ドイツで行われているインターネットプロジェ クトの多くは実際に共同学習と呼びうるものであるが,共同学習の名のも とにインターネットに載せられているものは極めて少ない。したがって,幾つ かの事例研究が教育雑誌に載っているものの,共同学習の総括的研究や生 徒の学習への影響については,よく分かっていないといえる。
筆者は,学校での共同学習についてオンラインでの情報源の調査を次のような方法で行っている。
教育でのモデルプロジェクトでのテレコミュニケーションの初期の事例の一つは,
1993年から96年にヘッセン州で行われた「KOKOS」(Cooperative Learning
in Networked Systems - Development of Lessons using Networks for
Learning together in Europe)と呼ばれるものである。このプロジェクトで
は,幾つかのグループウェアシステムとモデル授業が開発された。そのなか
には,意思決定のためのグループウェア「決定」があり,政策計画のための
「バランス」というグループウェアがあった。
ソフトウェアーはダウンロードが可能であるが,実際の経験はプロジェクトページには載っていない。
これは
http://www.bildung.hessen.de/abereich/inform/archiv/kokos/index.htm を参照。
「ココスKOKOS」のフレームワークで開発された社会科学の具体的プロジェクト
は,"Trasse"プロジェクトといわれるもので,町の道路計画や鉄道を扱うプ
ロジェクトである。これについては,[Magenheim/Opitz 1995] が印刷物で書
いているものの,この記事もまた実際のプロジェクトの成果については報告
してはいない。したがって,さらに調べないと,これがどのような影響を持っ
たのかについては判断できない。
興味ある,新しい可能性をもってインターネットは急激に開発されているが,そ
うした特別に開発されたシステムの一般化を阻んできている。
最近の大きなモデルプロジェクトは,共同だけに焦点を置くのではなく,多様な
方法で共同的な要素をもつインターネットプロジェクトを間接的に支持している。
プロジェクトについてのシステマチックな情報は確かに不足しているので,第2
部では,ドイツのインターネットプロジェクトを共同の要素をもとに,ス
クールネットワーキングで共通とみられるいくつかの基礎的タイプに分類してみよう。
実際の共同的活動や成果や評価については,ほとんど詳細な記述が無いので,一
般的なプロジェクトの文脈,観察可能な相互作用の形態と利用された技術を
もとに,いくらか表層的な分類とならざるを得ない。
【例】
さらに詳細な事例もある。バイオネットでの活動は,近年さらに包括的になって来ている。例えば,環境と健
康のプロジェクト
http://www.bionet.schule.de/health/
には,薬草データベースの下位プロジェクト
http://www.bionet.schule.de/health/healmed/index.html
があるが,そこでは国や地域による比較だけではなく薬草のガイドブック作成を目
指したり,薬草の科学的分類をHTMLで記述することなどが行われている。
環境が健康に与えるリスクプロジェクトでは,例えばダニの分布プロジェクトがあるが,
そこでは,Lower Saxony州の森林省と共同して,この州のダニの発生に関
する主要な情報源を作るようになってきている。
電子メールプロジェクトは教師が自分の個人的なアカウントでやっていたUUCPによ
る学校ネットワークの時代から非常にポピュラーである。狭い帯域しか必要とせず,
時差を越えて非同期コミュニケーションが行われ,個人・小グループ・巨大なメーリ
ングリストと柔軟なコミュニケーションが行われ,さまざまなトピックについていろ
いろな相手と交流することができるので,このジャンルは学校にとって魅力的なもの
である。ここでは,制御の度合いを変えることができる(メールを集めて送る方法や
一人一人の子どもがアカウントを持つ方法など)。外部の組織が加わるときには,周
到な準備とモデレーションが必要となる。
抽象的な教科内容と比べると,子どもたちは実際の相手と「出会う」ことができる
ということが特別な意味を持つ。中でも,出会った相手とコミュニケーションをとり
たいと思うということが外国語の学習を有意味なものにする。友情が発展して実際に
会ったり,長期にわたるコンタクトに進展することもある。
【例 】
電子メールプロジェクトと同じく,インターネットの共同利用による学習活動にお
いて,最も一般的なものの一つである。それは,学際的な扱いやクラブ活動だけでな
く,異なる教科の授業でも実施可能であり,短期でも長期でも,相手がいてもいなく
ても実施できることによる。子どもたちは,お互いにリソースを見つけたり発表する
のを助け合い,教師はガイドあるいはモデレーターの役割を担う。
このようなプロジェクトでは,情報を検索したり,選択したり,評価したり,統合
したり,発表したりするような活動が行われる。子どもたちが,いくつかのチームに
分かれて,それぞれ異なる課題(背景となる図書館やフィールドでの調査,ウェブに
よる検索,写真撮影,描画,ウェブのレイアウトなど)にあたることもある。
大量の違った種類の情報に対処し,適切なテーマについて討論し,意思決定をし,
異なる課題の間をうまくつなぎ,プレゼンテーションを通して学ぶのは貴重な経験である。
【例】
これは,同じクラスの中の子どもたちだけでなく異なる国を結んで行われる場合も
あり,低学年から高学年までの幅で,ローテクノロジー(電子メール)を用いて実施
することができる。ここでは,参加者が興味を持続し,その時の議論のテーマについ
てのコミュニケーションが有益なものになるためには,コーディネーションが重要で
ある。ただのコミュニケーションプロジェクトだと,ありきたりの成果しか産まない
。
このような相互作用の潜在的な価値は,同じトピックについての異なる考え方を学
ぶことや,創造性,言語能力の発達が期待できること,柔軟性と歩み寄りが必要とさ
れること,スケジュールを守ることの重要性が学べることなどである。
【例】
全学校,全クラスでインターネット・コンペティションに参加することができるが ,小人数のチームによる国際コンペティション(ThinkQuest)も魅力的である。子ど もたちは明確な目的を持ち,公開で順位が判定され賞金が与えられることが高い動機 付けとなり,特定のトピックに関する学習を(各国)独立して集中的に限られた期日 で完成させなければならないということが,集中的な経験になる。 国際的な協力が要求されたり,専門家のプレゼンテーションが重要となることもある。
【例】
教育プロジェクトに対して提供される,ドイツで最も著名なワークスペースは,
BSCW - Basic Support for Cooperative Work
(http://bscw.gmd.de/)である。
今は,主に教師が協働のため(NRWの教育サーバー "learn-line" http://www.learn-line.nrw.de/)
や,大学レベルのプロジェクトに用いられているが,子ど
もたちによる利用も奨励されており,将来的にはより高学年でも利用できる共通のツ
ールになる可能性を秘めている。
ワークスペースは通常,ウェブブラウザーとともに用いられる独立したプラットフ
ォームである。文書をアップロードすることができ,注釈を付けたり変更したりでき
る。また,社会的アウェアネスやコミュニケーションが起こるように設計されている
。教育利用は無料で,ドイツでは,GMDの公開サーバを利用すると独自にサーバーを
たてる必要がないので便利である。利用は,いくつかの言語で可能である(日本語は
未対応:協力募集!)。地域のグループから国際的な利用まで,さまざまな課題やグ
ループに対応可能な一般的なプラットフォームでもある。
学校での利用に関するBSCWの実例は,Ludger Humbertのページを参照。
http://in.Hagen.de/humbert/vortraege/welcome.html
子どもが仲間の生徒以外のパートナーと共同で学習することも広く行われており,
最も自然な共同学習は学校で行われているものである。
ニューメディアが学校にあたらしいパートナーシップをもたらすという認識が徐々
に広がっている。といのは,この領域では,子どもが教師よりも多くの知識を持って
いるようなことが起こりうるからである。いくつかのプロジェクトでは,子ども同士
で共に学んだり教師を個人教授することをねらったものである。
【例】
学校を地域社会に開くのは多くの学校での遠隔コミュニケーションプロジェクトの
目的の一つである。子どもと同じ世代,社会的背景の人々とコンタクトをとるだけで
なく,さまざまな異なるグループや公共施設とのコンタクトが試みられている。図書
館,放置園,病院,老齢者,外国人,生涯教育センター,企業,環境団体,市民団体
,大学などである。
地域行動計画オフィスへの最近のコネクションは,各所でみることができる。
K.i.d.S. Part では,子どもがインターネットを利用して公園の一部を設計している
(http://borneo.gmd.de/MS/KidsPart/)
コンピュータとインターネット接続はますます安価になりあたりまえのものになっ てきているので,子どももしばしば自学でインターネットのスキル,特に編集・出版 分野のスキルなどを習得する。そして,学校のホームページや生徒の新聞を公開する だけでなく,実社会で仕事をしはじめる者もある。これはもちろん,協働スキルを必 要とする。多くの場合,自分自身あるいはグループでの地方会社をオンラインで経営 したり,インターネット・パブリッシングの仕事を定期的に請け負ったり,ウェブに よる会社経営というような形になる。
しばしば,学校は校内に練習会社をつくったり交渉をシミュレートしたりして,子
どもたちが実際のビジネスをもとに考えるのを奨励する。
教師と子どもが実際にインターネットを一般市民に教えて,授業料を学校に納める
こともある(Altenforst-Akademie:
http://www.altenforst.de/akademie/)。
子どもがWebfactory
(http://webfactory.de)
のような会社を作ることもある。それは,ボンのClara-Schumann-Gymnasium in Bonn
(http://www.clara-online.de/)
でインターネットクラブとして発足たものである。